β2-マイクログロブリン
β2-マイクログロブリン(β2-m)は、99個のアミノ酸残基(分子量約11,800)からなる低分子蛋白質で糖鎖を含まない一本鎖ポリペプチドです。β2-mはリンパ球などの有核細胞で産生され、IgGや組織適合性抗原であるヒト白血球抗原(HLA)の不変部と類似構造を持っています。
通常、β2-mは腎糸球体基底膜を容易に通過し、尿細管において大部分が再吸収され異化されます。したがって、尿細管に再吸収障害があるとβ2-mが尿中に多量に排泄されることとなります。一方、腎糸球体濾過量(GFR)が低下すると血中のβ2-m濃度が上昇するため、両疾患の鑑別が可能です。
尿中β2-mが上昇する疾患には、重金属中毒症、Fanconi症候群、Wilson病などが、一方血清β2-mが上昇する疾患には慢性腎炎、ネフローゼ症候群、悪性腫瘍、自己免疫疾患などがあり、β2-mの測定はそれらの疾患の診断、経過および予後判定に応用されています。1)
1) 伊藤喜久:β2マイクログロブリン.広範囲血液・尿化学検査(上巻)、日本臨牀増刊号、230-232(1995)
注意事項
※β2-マイクログロブリンは血清およびヘパリン血漿で51倍以上、尿で5倍以上希釈して測定します。ただし、透析患者などの検体ではこの限りではありません。検量域内に入るように適宜希釈倍率を変更してください。
※β2-マイクログロブリンは酸性側で分解・変性を受けることがあります。検体を保存する際に、特に酸性尿は、専用の検体希釈液にて希釈後保存するなどの注意が必要です。
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