婦人科・性腺ホルモン
視床下部-下垂体-性腺系のホルモンは、互いに複雑に影響しあっており、特にLH、FSH、E2、プロゲステロン、テストステロンの関係においては、視床下部、下垂体への複雑なフィードバック機構が存在しています。
視床下部-下垂体-性腺系の異常は、主として性腺(卵巣、精巣)の異常による原発性と、視床下部、下垂体の異常による続発性に分けられます。また、その症状は、性分化、二次性徴の発現及び維持、月経、排卵、精子形成の異常として現れ、年齢によって対象となる疾患が大きく異なるのが特徴です1)。一般に、視床下部-下垂体-性腺系の異常が疑われる場合のホルモン学的なスクリーニングとして、LH、FSH、E2、テストステロン等が測定されます1)。
一方、プロラクチンの測定は高プロラクチン血症の診断に用いられ、主な原因疾患としてはプロラクチノーマなどのプロラクチン産生腫瘍があげられます。また、プロラクチンの分泌が亢進すると排卵が抑制されて無月経が起こる2)など、不妊の原因にもなるため、不妊外来における内分泌検査の一つとしてプロラクチンが測定される場合もあります。
また、近年では生殖補助医療技術の発達によって、排卵誘発や体外受精等による不妊治療が多くの医療施設で実施されるようになり、その補助的な検査としてLH、E2、プロゲステロン等のホルモン測定が利用されています3)。
ヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG:human Chorionic Gonadotropin)は胎盤絨毛で生成、分泌される分子量約38,000の糖たん白質ホルモンで、胎盤機能を反映するよい指標とされています。構造的にはαとβの2つのサブユニットが非共有結合で結合しており、αサブユニットのアミノ酸配列は、下垂体前葉から分泌されるLH(黄体形成ホルモン)、FSH(卵胞刺激ホルモン)、TSH(甲状腺刺激ホルモン)と共通ですが、βサブユニットはそれぞれのホルモンに特異的です。ただし、LHのβサブユニットとは相同性が高く、C末端の30個のアミノ酸(CTP: C terminalpeptide)が異なるに過ぎません4)。
hCGは、通常は妊娠中のみ血中に見出されますが、胞状奇胎をはじめとする絨毛性疾患や絨毛癌でも高値となります。また、精巣腫瘍、胃癌、肺癌、その他多くの悪性腫瘍において、hCGの産生が認められる場合があります(異所性hCG産生腫瘍)4) 5)。
これらの悪性疾患では、hCGの糖鎖に異変(糖鎖の癌性変化)を生じることが報告されており6)、また、hCGだけでなく、フリーのhCG-βサブユニットが産生される場合もあります4)5)7)。
hCGまたはβhCGの測定は、妊娠の早期診断と同時に流産や子宮外妊娠といった異常妊娠との鑑別に、超音波断層法とともに広く用いられています。また、絨毛癌、精巣腫瘍、およびその他の異所性hCG産生腫瘍で高値を示すことから、これらの疾患の診断や治療効果の判定等にも利用されています4) 5)。
1) 紫芝 他編、内分泌機能検査の実際、ホルモンと臨床、43(夏季増刊号)(1995)
2) 井村 編、内分泌・代謝病学(第2版) 医学書院
3) 貝嶋 他、自然周期(clomiphene周期)採卵法の実際、臨婦産, 54, 1372-1375(2000)
4) 伊吹 他、ヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG)およびsubunit、広範囲血液・尿化学検査、免疫学的検査(中巻)、日本臨床(増刊号)(1995)
5) 香川 征、hCG-β、泌尿器外科、4, 1089-1093(1991)
6) 遠藤 他、糖蛋白質糖鎖の癌性変化、医学と薬学、26, 973-981(1991)
7) 青野 他、未分化肺癌患者に認められた高hCGβサブユニット血症の一例、日本臨床化学会関東支部会誌, 2, 69-73(1992)
詳しくは、各項目のページをご覧ください。
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