hCG βhCG
ヒト絨毛性ゴナドドトロピン
ヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG:human Chorionic Gonadotropin)は胎盤絨毛で生成、分泌される分子量約38,000の糖たん白質ホルモンで、胎盤機能を反映するよい指標とされています。構造的にはαとβの2つのサブユニットが非共有結合で結合しており、αサブユニットのアミノ酸配列は、下垂体前葉から分泌されるLH(黄体形成ホルモン)、FSH(卵胞刺激ホルモン)、TSH(甲状腺刺激ホルモン)と共通ですが、βサブユニットはそれぞれのホルモンに特異的です。ただし、LHのβサブユニットとは相同性が高く、C末端の30個のアミノ酸(CTP:C terminalpeptide)が異なるに過ぎません1)。
hCGは、通常は妊娠中のみ血中に見出されますが、胞状奇胎をはじめとする絨毛性疾患や絨毛癌でも高値となります。また、精巣腫瘍、胃癌、肺癌、その他多くの悪性腫瘍において、hCGの産生が認められる場合があります(異所性hCG産生腫瘍)1)2)。
これらの悪性疾患では、hCGの糖鎖に異変(糖鎖の癌性変化)を生じることが報告されており3)、また、hCGだけでなく、フリーのhCG-βサブユニットが産生される場合もあります1)2)4)。
hCGまたはβhCGの測定は、妊娠の早期診断と同時に流産や子宮外妊娠といった異常妊娠との鑑別に、超音波断層法とともに広く用いられています。また、絨毛癌、精巣腫瘍、およびその他の異所性hCG産生腫瘍で高値を示すことから、これらの疾患の診断や治療効果の判定等にも利用されています1)2)。
1) 伊吹 他、ヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG)およびsubunit、広範囲血液・尿化学検査、免疫学的検査(中巻)、日本臨床(増刊号)(1995)
2) 香川 征、hCG-β、泌尿器外科、4,1089-1093(1991)
3) 遠藤 他、糖蛋白質糖鎖の癌性変化、医学と薬学、26,973-981(1991)
4) 青野 他、未分化肺癌患者に認められた高hCGβサブユニット血症の一例、日本臨床化学会関東支部会誌,2,69-73(1992)
注意事項
※測定原理の比較
弊社のhCG測定試薬 Eテスト「TOSOH」Ⅱ(HCG)および Eテスト「TOSOH」Ⅱ(HCGⅡ)は、αとβのサブユニットが結合しているintact hCGを測定する試薬です。一方、βhCG測定試薬 Eテスト「TOSOH」Ⅱ(βHCG)および Eテスト「TOSOH」Ⅱ(βHCGⅡ)は intact hCG と free hCG-βsubunitを合わせて測定するtotal βhCGの測定試薬です。
なお、他社の測定キットには、 free hCG-β subunit のみを測定するfreeβhCG測定試薬もありますが、これとは異なりますのでご注意ください。
※臨床的有用性の比較
hCG、βhCG測定試薬の使い分けの例を下表に示します。
弊社のhCG測定試薬は、血清と尿を測定対象としていることから、妊娠診断への有用性が高いと考えられます。一方βhCG測定試薬では、hCGだけでなく、free hCG-βsubunit も併せて測定できるため、free hCG-βsubunitの産生が見られる絨毛性疾患やhCG産生腫瘍の経過観察に有用であると考えられます。
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