PTH
副甲状腺ホルモン
副甲状腺は甲状腺の裏側に通常4個存在する器官であり、上皮小体ともいわれます。副甲状腺からは、84個のアミノ酸からなるポリペプチドである副甲状腺ホルモン(PTH: Parathyroid Hormone)が分泌されており、このPTHは骨、腎臓などに作用して生体内カルシウム濃度の恒常性を保つ作用を有しています。
PTHは血中において多くの分子種があることが知られていますが、弊社測定系はインタクトPTHを測定するキットであり、生理活性のない中間部フラグメントやC端フラグメントの影響を受けずにインタクトPTHを測定できます1)。
PTHは副甲状腺の腺腫や過形成、がんなどによる原発性副甲状腺機能亢進時に過剰分泌が起こり高値になり、逆に副甲状腺機能低下症では低値になります2)3)。また慢性腎不全などで、低カルシウム状態が引き金となって二次的にPTH放出が亢進する場合もあります。この時は、腎尿細管や小腸からのカルシウム吸収が促進されるだけでなく、骨からカルシウムが遊離する骨吸収が促進されるため、骨代謝状態を知り、臨床経過を観察するためにPTH測定値が使われます。これに関連して、米国National Kidney Foundation K/DOQIガイドライン(2003)には、腎不全患者のカルシウム濃度をコントロールするために、インタクトPTH目標値が掲載されています4)。
慢性腎不全の各病態別 血漿中インタクトPTHの目標値
腎不全病態ステージ | 腎糸球体濾過量(mL/min./1.73m2) | 目標インタクトPTH濃度(pg/mL) |
3 | 30 ~ 59 | 35 ~ 70 |
4 | 15 ~ 29 | 70 ~ 110 |
5 | < 15 or 透析 | 150 ~ 300 |
本邦においても、生命予後重視の観点から日本人のデータベースが新たに解析され、2006年10月に、「透析患者における二次性副甲状腺機能亢進症治療ガイドライン」が日本透析医学会から発表されました。本ガイドラインによれば、末期腎不全患者において、血清リン、カルシウム濃度が管理されている状態でのインタクトPTH管理目標は、60 ~ 180 pg/mLとされています5)。
1) Nussbaum SR,et al.,:Highlysensitive two-site immunoradiometric assay of parathyrin,and its clinical utility in evaluating patients with hypercalcemia.,Clin.Chem.,33,1364-1367(1987)
2) Endres DB.,et al.,:Immunochemiluminometric and immunoradiometric determinations of intact and total immunoreactive parathyrin:Performance in the differencial diagnosis of hypercalcemia and hypoparathyroidism.,Clin.Chem.,37,162-168(1991)
3) Lepage R.,et al.,:SUperiority of dynamic over static reference intervals for intact,midmolecule,and C-terminal parathyrin in evaluating calcemic disorders.,Clin.Chem.,38,2129-2135(1992)
4) National Kidney Foundation:K/DOQI Clinical Practice Guidelines.,Am.J.Kidney Dis.,42(Suppl 3):S1-S202(2003)
5) 社団法人 日本透析医学会:「透析患者における二次性副甲状腺機能亢進症治療ガイドライン」、日本透析医学会雑誌,39,1435-1455(2006)
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