イムノアッセイの原理と試薬形態
イムノアッセイは、体内で免疫系(体内の異物を認識、排除する働き)における重要な役割を担う「抗体」の特性(特定の物質に結合する)を利用し、血液や尿中に含まれるホルモンなど微量の物質を高感度、高精度に定性、定量する方法です。
病院などで皆さんから採血、採尿された「検体」は、こうしたイムノアッセイ系などを用いてさまざまな検査が行われ、診療に役立っています。
東ソーのAIAシリーズで使われている検査試薬のイムノアッセイ系は、大きく分けて「サンドイッチ法」と「競合法」の2種類があり、それぞれについて、簡単な原理をご紹介します。
1.サンドイッチ法
サンドイッチ、つまり「具」を2枚の「パン」で挟むように、目的の物質を捉まえる方法です。
ここで「具」が目的となる物質、「パン」は目的の物質のみに結合する抗体です。
通常は抗体が目的の物質に結合する場所は1つなので、その場所の取り合いにならないよう、2つの抗体は結合する場所が異なるものを使います。
模式図で示します。
まず、1つめの抗体を動かないよう、固定化しておきます。そこに検体(血液や尿)を加えると、1つめの抗体に目的の物質(抗原)のみが結合するとともに、予め加えてある2つめの抗体も続いて結合し、抗体-抗原-抗体、という「免疫複合体」を形成します。
なお、2つ目の抗体には後で検出に用いるための「酵素」が付加されています。
全ての抗原が免疫複合体を形成するわけではありませんが、検体中に存在する抗原量と形成される免疫複合体の量には相関性があります。
免疫複合体形成に用いられなかった2つめの抗体や抗原(検体)は洗浄操作によって洗い流されます。
最後に、免疫複合体の量を測ります。2つ目の抗体に付与された酵素に対する基質を加えてやると、基質は分解され、蛍光を持つ物質が新たに作られます。この蛍光物質産生量は免疫複合体の量に比例するため、蛍光強度を測定することにより検体中の「抗原」量を見積もることができます。
1a.2ステップサンドイッチ法
サンドイッチ法の中でも特殊な方法で、検体中の「抗体」量を測るのに用いられます。
この方法は、「ある特定の物質」に対する抗体が検体に含まれているかを調べるものです。
まず、固定化された「ある物質」に検体を加え、それに対する抗体を結合させます。
一旦洗浄操作により余分なものを除いた後、次に「ヒト抗体」に特異的に結合する2つめの抗体を加えます。上述とは少々形は異なりますが、これも「免疫複合体」といえます。
2回目の洗浄操作を経て酵素に対する基質を加えると、同様に蛍光強度から特定の抗体量を見積もることができます。
2.競合法
検出したい物質(抗原)が小さな分子である場合に多く用いられます。
抗体はある特定の物質(のある特定の場所)に結合しますが、抗体分子は非常に大きいため、小さな物質と結合すると2つめの抗体は結合できないことがあります。
そこで、あらかじめ固定化した抗体に対して、検体中の抗原と予め加えておいた抗原で
椅子取りゲームの「競争反応」をさせます。
それぞれの抗原量の比率で、「椅子」の割り振りが決まります。予め加えておく抗原は上述の酵素が付与されているため、洗浄操作後基質を加えると検体由来の抗原量が多いときは蛍光強度が弱く、逆の場合は強い蛍光強度が得られるため、検体中の抗原量を見積もることができます。
この他にもディレイ1ステップなど、特殊なイムノアッセイもありますが、対象となる抗原(あるいは抗体)の特性に合わせ、個々の測定項目に最適な方法を選択、開発を進めています。