●測定原理
東ソーリポ蛋白分析計HLC-729LPⅡは、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を原理としています。
・ リポ蛋白の分離
リポ蛋白の分離には陰イオン交換分離剤を用います。リポ蛋白の各画分は、それぞれのもつ負電荷と分離剤表面にある正電荷との相互作用の程度にて分離されます(陰イオン交換クロマトグラフィー)。
溶液中のリポ蛋白は、構成物質であるアポ蛋白およびリン脂質由来の負電荷を有していて、その表面電荷の量はリポ蛋白のサイズにより異なっています。分離剤を充填したカラム内で、陰イオン交換樹脂表面へ リポ蛋白を吸着させた後、塩濃度依存的な溶出を行うことにより、各リポ蛋白をカラムから段階的に溶出することができます。
・ 検出
陰イオン交換クロマトグラフィーにより分離されたリポ蛋白中のコレステロールを酵素法により発色させるポストカラム法による検出を行っています。
まず、エステル型コレステロールは、コレステロールエステラーゼ(CE)の作用で、遊離脂肪酸と遊離型コレステロールに分かれます。
この遊離型コレステロールと、もともと含まれている遊離型コレステロールはコレステロールオキシダーゼ(COD)により酸化分解を受け、過酸化水素(H2O2)を生成します。生成したH2O2 、4-アミノアンチピリン(4-AA) 、N-(2-ヒドロキシ-3-スルホプロピル)-3,5-ジメトキシアニリンナトリウム(HDOAS)にペルオキシダーゼ(POD)が作用すると、酸化縮合によりキノン色素(λmax585nm)が産生します。これを可視光検出器にて590nmの波長で検出します。
・ 装置流路図
本装置の流路図は下図の通りです。溶離液をポンプユニットよりカラムに送り、途中のサンプラーにて血清検体を系内に注入します。カラムから溶出された各画分は反応液と混合され、リアクター内にて加温し反応することでキノン色素が合成されて検出されます。
参考文献
1) HPLCを用いたリポ蛋白分析法、昆 美香ら、日本臨床検査自動化学会誌、34、135-144 (2009)
2) 高速液体クロマトグラフィーによるリポ蛋白定量法、廣渡祐史ら、臨床化学、41、327-335 (2012)